Blog 2026.07.08

新聞記事はAIにどう使われているのか——検索、要約、学習を分けて考える

AI検索をめぐる新聞社の議論は、「記事をAIに使わせるべきか、拒否すべきか」という二択で語られがちです。ただ、実務で考えると、大事なのはその手前にあるように思います。

新聞社は、通常の検索やGoogleニュースから読者に来てもらうため、検索エンジンに記事を見せてきました。一般の読者には見せていない有料部分を、クローラー(記事を集めるプログラム)には見せている社も、少なからずあると見られます。検索で見つけてもらい、購読につなげるためです。

ただ、それは「検索で見つけてもらうため」に見せてきたものでした。AIが検索画面の上で記事を要約して見せることや、AIモデルの学習に使うことまで、まとめて認めたわけではない。この認識のずれが、いま表面化しています。

AIによる利用は「3種類」

議論が噛み合わない一因は、性質の違うものが「AIに使わせる」の一語でまとめられている点にあると思います。分けて考えると、大きく3つになります。

一つ目は、AIによる概要(AI Overview)です。検索結果の最上部に、AIが作った要約が表示される機能です。読者が記事を開く前に、検索画面の上で知りたいことの多くが済んでしまう場合があります。

二つ目は、グラウンディングです。AIが回答を作るその瞬間に、記事を参照材料として使うことを指します。学習とは違い、モデルを事前に作り込む話ではなく、質問が来たときにその場で記事を下敷きにする使い方です。

三つ目が、学習です。AIモデルそのものを作る・改善するために、事前に大量の文章を取り込む使い方です。

この3つは、本来は別の話です。ところが、拒否したいと思ったときに、用途ごとに分けて選べる手段は、まだ十分に整っていません。次に見るように、そこが今回の争点になっています。

「検索に載ること」と「AIに使われること」が同じ入り口だった

これまで、AIによる概要やグラウンディングは、通常の検索と同じ仕組みの上で動いてきました。Googleの説明でも、AIによる概要やAIモードは検索のプレビュー制御に従うとされています。つまり、検索で要約(スニペット)の表示を許可した範囲が、そのままAIによる概要で使われる対象になります。

有料記事についても同じ理屈が働きます。有料部分をクローラーに見せてスニペット表示を許可していれば、その範囲は検索に出るだけでなく、AIによる概要の材料にもなりえます。無料部分と有料部分で扱いが自動的に分かれるわけではなく、クローラーに見せてスニペットを許可した範囲に従う、というのがGoogleの説明です。

裏を返すと、検索に載ることを受け入れている限り、「AIの回答づくりに使われることだけを拒否する」という選び方は、これまでできませんでした。拒否しようとすれば、記事の収集自体を断って通常の検索結果からも消えるか、要約の表示を抑えるタグを付けるか。どちらも、AIだけをピンポイントで外す方法ではありません。

日本新聞協会も4月の声明で、同じ構造を問題にしています。通常検索とAI検索でクローラーの制御が一体になっているため、AI検索での利用だけを拒否しようとすると、通常検索の表示まで失われかねない。だから協会は、権利者に負担をかけないオプトアウト(利用拒否)の仕組みを日本でも早く整えるよう求めています。

学習については、少し事情が違います。Googleは2023年から、学習への利用だけを拒否できる設定(Google-Extended)を用意しており、新聞社もこれを使えます。実際、英米の主要ニュースサイトを調べたある民間調査では、そのおよそ8割が、学習用のAIクローラーのいずれかをブロックしていました。

ただし、この設定で止められるのはGeminiなどの学習やグラウンディングであって、検索のAIによる概要は対象外です。Googleは、Google-Extendedが関わるのは検索ではなくGeminiなどのAI製品の側だと説明しています。学習は個別に断れても、AIによる概要は同じようには外せない、という状態が続いてきました。

もっとも、こうした拒否は、新聞社の側が対象のAIクローラーを一つずつ指定して、はじめて成り立ちます。何も指定しなければ、初期状態では利用を許していると見なされる仕組みです。

しかも、この指定を記すrobots.txt(クローラーへの指示を書くファイル)は、国際規格上も「アクセスを禁止する権限ではなく、クローラー側の自発的な遵守に依存する」とされています。実際に、この指示を守らずに収集するAIクローラーが一定数存在することも、複数の調査で報告されています。

英国で、入り口を分ける動きが始まった

この「同じ入り口」を分けようとする動きが、英国で制度になりました。

英国の競争・市場庁(CMA)は6月3日、Google検索に新しいルールを課しました。柱は、新聞社などが自社の記事を検索のAI機能に使わせるかどうかを、通常検索とは切り離して選べるようにすることです。しかも、その選択をしたことで通常検索での扱いが不利にならないよう求めています。追加学習(ファインチューニング)からの拒否や、AIの回答に記事が使われた場合の出典リンク表示も、あわせて求められました。

同じ日、Googleも、検索管理ツール(Search Console)に新しい設定を加えると発表しました。AIによる概要、AIモード、DiscoverのAI機能に自社を表示させるか、回答の材料に使わせるかを選べる設定です。外した場合でも、それを理由に通常検索の順位を下げることはないとしています。まず英国の一部から始め、他の国や地域への提供時期は示されていません。

ただし、CMA自身が「これで全部解決したわけではない」という立場です。CMAの決定文書には、学習・グラウンディング・追加学習はそれぞれ目的が違うのだから別々に選べるようにすべきだ、という関係者の主張が整理されています。

あわせて、新聞社が実際には外しにくいという指摘も記録されています。AIによる概要が検索画面の目立つ場所に出るため、外せば、他社が残るなかで自社だけがAI経由のわずかな接点まで手放すことになるからです。

CMAは、対価の公正さについては必要なら追加の措置を取るとしています。今回の制度は解決ではなく、用途ごとに測る・制御する・交渉するための入り口だと捉えるのが正確だと思います。

三つに分かれる新聞社の対応

海外の新聞社の対応は、すでに分かれています。これはCMAの決定より前から続いている動きで、いまも並行しています。学習用のAIクローラーをブロックしている社が主要サイトの約8割にのぼる一方で、AI企業と手を組む社もあり、方向は一つではありません。

一つ目は、訴訟で争う対応です。ニューヨーク・タイムズは2023年末、記事の無断利用を著作権侵害だとして、OpenAIとMicrosoftを提訴しました。

二つ目は、契約を結ぶ対応です。フィナンシャル・タイムズやニューズ・コープ、ル・モンドなどは、2024年にOpenAIと提携し、記事がChatGPTの中で出典付きで使われるようにしています。

三つ目が、より新しい、学習ではなく参照に限った契約です。7月、オーストラリアのNineとMicrosoftが、Copilot(MicrosoftのAI)がNineの記事本文を有料部分も含めて参照し、AI検索の回答の裏づけに使う契約を発表しました。回答には見出しや要約とともに元記事へのリンクが付き、読者を元記事にアクセスさせる設計だとされています。これは、記事を学習に使わせる契約というより、AIにどう参照させるか、出典をどう表示させ、元記事にどうアクセスさせるかを条件として定める契約です。

AI検索が記事へのアクセスに与える影響

AI検索が記事へのアクセスに与える影響についても、数字が出始めています。

米調査機関ピュー・リサーチ・センターの分析では、AIの要約が表示された検索で、通常の検索リンクがクリックされる割合は8%でした。要約が出ない検索では15%だったので、およそ半分です。要約の中に置かれたリンクがクリックされる割合は、1%にとどまりました。

もっとも、これは米国のある時期のデータで、国や媒体、記事の分野によって影響の出方は変わります。速報系のニュース検索では、そもそもAIの要約が出ないことが多い、という指摘もあります。数字をそのまま自社に当てはめることはできません。

だから、まずは自社の記事がAI検索でどう扱われているのか、そこからどのくらいの流入があるのか、グーグルのAI検索導入により会員登録や全体のアクセス量はどう変化しているのかを自社で測れる状態にしておくことが、重要になると思います。

AIとの向き合い方を、用途ごとに考える

こうして考えると、新聞社の実務では「AIに使わせるか、拒否するか」の単純な二択では、現実に対応できなくなってきていると感じます。

分けて考えたいのは、次の四つです。通常検索への掲載。AIによる概要での要約やグラウンディング。モデルの学習。そして、GoogleのNews ShowcaseやAI企業とのライセンス契約など、記事を対価を得て提供する商業利用。この四つを分けたうえで、それぞれについて、自社の記事がどう使われているかを測り、使わせる範囲を決め、条件を交渉する。こうしたことが実務の課題になってきます。

これは法務だけの課題でも、検索対策だけの課題でもありません。どの記事をどこまで見せるかは編集の判断です。その先の登録や購読への導線は事業部門の設計です。全体をどの会議体で決めるかは経営の仕事です。

制度や仕組みの側は、時間をかけて変わっていくでしょう。ニューヨーク・タイムズの訴訟も、欧州の出版社団体の申し立ても、英国CMAの制度も、日本新聞協会の声明や国内の提訴も、いまの検索やAIの使われ方を問い直す動きです。一社ですぐに仕組みを変えられるわけではありませんが、業界全体では変わろうとしています。

その間にも、自社で手を付けられる部分はあります。自社の記事がどう使われているかを測り、社内のどこで判断するかを決めておく。この準備は、制度をより適切な仕組みへと変えていくためにも、将来、制度が変わったときにそれをスムーズに活用するためにも、役に立ちます。

参考にした主な資料
  • CMA(英国・競争・市場庁)プレスリリースおよび最終決定文書(2026年6月3日)
  • Google公式ブログ「New opportunities, control and insights for website owners」(2026年6月3日)
  • Google Search Central「AI features and your website」「Flexible Sampling」ほか
  • Google Public Policy(AIモデルの学習に関する説明)/Google検索セントラル(Google-Extendedの仕様)
  • 日本新聞協会「AI検索サービスに関する声明」(2026年4月20日)
  • Microsoft公式リリース(Nine・Copilotの参照契約、2026年7月)
  • ピュー・リサーチ・センター(AI要約表示時のクリック率調査、2025年)
  • Press Gazette/Buzzstream(主要ニュースサイトのAIボット・ブロック状況調査、2026年)
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